感染症疫学のためのデータ分析入門 数理モデル編

感染症疫学のためのデータ分析入門 数理モデル編
著者
西浦博
出版社
金芳堂
判型
A5
頁数
311
出版年月
2026年06月
ISBN
9784765319973

概要

本書は、好評を博した『感染症疫学のためのデータ分析入門』(2021年10月刊)の応用編として、数理モデルおよびネットワーク分析を体系的にまとめた続編です。前著で扱った基礎知識を踏まえ、「実際の観察データをどのように扱うか」という実践的な視点から、初学者にもわかりやすく解説しています。

内容は京都大学大学院医学研究科(公衆衛生修士コース)の講義「感染症数理モデル入門」に準拠しており、感染症の伝播能力の評価、閾値現象の理解、ワクチン効果の検証といった理論から、コンピュータを用いた流行モデルの数値計算や統計学的推定まで、単に読むだけではなく、章末の確認問題を解いていくことによって、着実に理解を深めることができます。

また、HPから本書に掲載されているサンプルデータおよびコードをダウンロードでき、読者が自らの手でデータを扱いながら、シミュレーションやデータ分析の実践的手法を身につけられるよう工夫されています。感染症数理モデルを体系的に学び、実務や研究への応用を目指す方にとって、必携の一冊となります。

目次

Part1 感染症数理モデルの必須方法論
Chapter1 コンパートメントモデルによる感染症流行の記述
本章の目的

1 感染症流行のコンパートメントモデルの考え方
2 SIRモデルによる流行の動的な記述
(1)SIRモデルの定式化
(2)基本再生産数
(3)SIRモデルの適用例
(4)状況に合わせた拡張・その1:人口動態の導入
(5)状況に合わせた拡張・その2:感染性の変動の導入
まとめ
章末確認問題

chapter2 異質性を捉えるサイエンス:次世代行列
本章の目的

1 基本再生産数の定義
2 接触の異質性とWAIFW行列
3 接触を規定するもの
4 インフルエンザの予防接種
5 次世代行列
付録
章末確認問題

chapter3 複雑ネットワーク、集団免疫と最終規模:ランダムな接触と異質な接触
本章の目的

1 複雑ネットワーク
(1)グラフ理論
(2)ネットワークの指標
(3)ネットワークの種類
2 集団免疫と最終規模
(1)ランダムな接触における集団免疫と最終規模
(2)異質な接触を加味した場合の最終規模
(3)異質性は集団免疫と最終規模へどのように影響する
まとめ

chapter4 モデルから次世代行列を導こう
本章の目的

1 モデルの次世代行列と基本再生産数R0
(1)SEIRモデル
(2)性感染症のモデル
(3)地域間の移動を含むモデル
まとめ
付録 ベクトルと行列の計算公式
章末確認問題

chapter5 安定性分析に入門しよう
本章の目的

1 平衡解と基本再生産数R0
(1)感染症のない平衡解
(2)エンデミックな平衡解
2 局所安定性
(1)感染症のない平衡解
(2)エンデミックな平衡解
(3)ヤコビ行列
3 大域安定性
(1)感染症のない平衡解
(2)エンデミックな平衡解
まとめ
章末確認問題

Part2 流行モデルを社会実装する
chapter6 流行時における基本再生産数の推定
本章の目的

1 基本再生産数と成長率
(1)感染症流行のタイプ
(2)流行初期における感染者数の指数関数的増加
(3)成長率と基本再生産数の関係
2 基本再生産数の推定
3 最終規模の推定
(1)基本再生産数と最終規模の関係
(2)次世代行列を利用した最終規模の推定
4 オイラー=ロトカの方程式と積率母関数の導出
(1)オイラー=ロトカの方程式の導出
(2)基本再生産数を推定するための積率母関数
(3)積率母関数の利用:指数分布の例
まとめ

chapter7 発症間隔と世代時間の推定
本章の目的

1 はじめに
2 発症間隔
(1)発症間隔の特徴
(2)発症間隔の量的推定
(3)発症間隔の実用的な意味
3 世代時間
(1)世代時間の特徴
(2)3種(内在的、後向き、前向き)の世代時間
(3)時刻依存の世代時間に関する実践的な考え方
(4)家庭内伝播データからの内的世代時間の推定
まとめ
章末確認問題

chapter8 蔓延時(エンデミック期)における基本再生産数の推定
本章の目的

1 エンデミック状態の感染症
(1)エンデミック状態を想像しよう
(2)触媒モデル(catalytic model)
2 集団免疫に満たないワクチン接種
3 血清疫学データに基づく基本再生産数
4 血清疫学データを用いた感染力の推定プロセス
(1)年齢に独立な感染力の推定
(2)年齢に依存する感染力の推定
5 発展編:母体由来免疫や免疫の失活を加味しよう
(1)母体由来免疫を加味したエンデミックデータの分析
(2)免疫失活を加味した感染力の推定
まとめ
章末確認問題

chapter9 小規模流行:確率過程で数理モデル化をしよう
本章の目的

1 感染症の伝播と確率論
(1)なぜ感染症の流行動態は毎回違うのか?
(2)マルコフ過程とコンパートメントモデル
2 分岐過程と絶滅
(1)ゴルトン・ワトソン分岐過程(Galton-Watson branching process)
(2)感染の広がり方
(3)絶滅確率
3 出生死亡過程
(1)出生過程
(2)出生死亡過程
(3)出生と死亡を伴うSIRモデル
4 連鎖型二項過程
(1)Reed-FrostとGreenwoodの流行モデル
(2)En’koの流行モデルも検討してみよう
(3)家庭内感染
まとめ
章末確認問題

chapter10 空間的な流行拡大を捉えよう
本章の目的
1 感染症の空間的な伝播
(1)空間構造を持つ数理モデル
(2)空間的カップリングモデル
(3)移動モデル
2 メタ個体群モデル
3 国際的な伝播を予測する数理モデル
1)メタ個体群モデルを用いたリアルタイム予測
2)実効距離を用いた輸入感染症のリスク推定
まとめ
章末確認問題

chapter11 リアルタイムモデリング
本章の目的

1 リアルタイムモデリングの重要性
2 致命割合の推定
(1)粗計算における致命割合の問題点
(2)時間の遅れを考慮したCFR推定モデル
(3)個人別尤度を使ったモデル化
3 人獣共通感染症アウトブレイクにおける基本再生産数の推定
(1)人獣共通感染症のスピルオーバー
(2)診断バイアスと基本再生産数の推定
(3)継続するスピルオーバー
4 実効再生産数のリアルタイム推定における観測打ち切り
(1)ナウキャスティング
(2)逆計算
(3)現実のデータへの対応
まとめ
章末確認問題

chapter12 蚊媒介感染症(マラリア・デング熱)の数理モデル
本章の目的

1 蚊媒介感染症の特徴とそのモデル化
(1)数理モデルの視点から見た蚊媒介感染症
(2)蚊媒介感染症の基本モデル
2 Ross-Macdonaldモデルの導出
(1)モデルの基本構造
(2)感染力のモデル化
(3)Ross-Macdonaldモデルにおける基本再生産数
(4)Ross-Macdonaldモデルにおける定常状態
(5)蚊の垂直感染のモデルへの影響
3 蚊媒介感染症における疫学指標
(1)基本再生産数
(2)昆虫学的接種率
(3)媒介蚊感染能
4 マラリア休眠体による長期潜伏の考慮
(1)マラリア原虫の長期潜伏
(2)二極化した潜伏期間の数理モデル上の取り扱い
まとめ
章末確認問題

chapter13 国境における検疫のモデル
本章の目的

1 はじめに
2 これまでの検疫期間の決定論拠と問題点
(1)クラシックな検疫期間の決定手法とコンセプト
(2)クラシックな検疫期間の決定手法の問題点
3 不顕性感染者を考慮した検疫期間の決定
(1)感染性宿主の侵入を防止する効果
(2)不完全な検疫と診断補助がある場合の検疫の効果
(3)侵入者によって生じる2次感染者数の抑制効果
4 侵入者によって引き起こされる流行に対する検疫の疫学的効果
(1)流行の絶滅確率を利用したモデ
(2)侵入者によって流行が引き起こされる確率の相対的減少
5 流行観察の遅れを及ぼす検疫の効果
6 応用方法
まとめ
章末確認問題

chapter14 疾患別の数理モデル(季節性インフルエンザ、結核、HIV/AIDS)
本章の目的

1 季節性インフルエンザの数理モデル
2 結核の数理モデル
(1)結核の内的動態を捉えた数理モデル
(2)インターフェロンガンマ遊離アッセイを利用した年間感染リスクの推定
3 HIV/AIDSの発展型逆計算モデル
まとめ
章末確認問題
章末確認問題 解答編

あとがきにかえて:もっと感染症数理モデルを学ぶ人のために
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